土地の評価を自分で行う方法 ~後編~

『土地の評価を自分で行う方法 ~前編~』に続いて今回は、宅地の形状や状況等によって更に調整が必要となる特殊なケースや宅地を自己の用に供しているのではなく他人に貸しているケース等の評価方法について解説するとともに、相続税を申告する際の土地評価に関する書式の記載方法を紹介します。

目次

路線価方式における具体的な評価方法(その2)

宅地でもきれいな整形地(正方形や長方形)であることは珍しく、むしろそれ以外の形状や特殊な状況にあるケースも多いことから、次のような場合の評価方法についても『財産評価基本通達』には定められています。

不整形地

奥行距離が一様でないような宅地(いわゆる不整形地)は、不整形の程度・割合に応じて宅地の利用効率が悪くなることから、その宅地が所在する地区や地積の大きさ、かげ地割合に応じて定められた”不整形地補正率”を用いて次のように評価します。

尚、かげ地割合は、不整形地をカバーする作図上の最小整形地(想定整形地)に占める不整形地以外の部分の地積割合をいいます。

計算方法

評価額 = 不整形地に近似する整形地としての価額×不整形地補正率

【参考】 財産評価基本通達・付表4 地積区分表/付表5 不整形地補正率表

ここで基となる整形地としての価額は、次のいずれかの方法で計算した最も低いものになります。

計算方法(いずれか最も計算結果が低いもの)

①不整形地を区分して求めた整形地を基として計算する方法

②不整形地の地積を間口距離で除して算出した計算上の奥行距離を基として求めた整形地により計算する方法

③不整形地に近似する整形地(近似整形地)を基として計算する方法

④近似整形地と隣接する整形地を合わせた全体の整形地の価額から隣接する整形地の価額を差し引いた価額を基として計算する方法

ただ実務的には②の方法によることが多く、その場合の評価額は次のようになります。

計算方法

評価額 = 路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率×地積

この場合の奥行価格補正率を求める際の奥行距離は、”計算上の奥行距離”と”想定整形地の奥行距離”のいずれか短い方になります。

間口が狭小な宅地等

整形地であっても奥行に比して間口が狭小であったり、間口に比して奥行が長大であった場合は、正方形に比べて宅地の利用効率が悪くなることから、宅地の間口距離や奥行距離/間口距離の割合に応じて定められた間口狭小補正率奥行長大補正率を用いて次のように評価します。

尚、間口が狭小か否か、奥行が長大か否かは、正面路線からみて判定します。また、いずれにも該当する場合は、両補正率を連乗することができます。

計算方法

評価額 = ①又は②又は③×地積

ー①路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率

ー②路線価×奥行価格補正率×奥行長大補正率

ー③路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行価格補正率

【参考】財産評価基本通達・付表6 間口狭小補正率表/付表7 奥行長大補正率表

がけ地

宅地の一部ががけ地になっている場合、そのがけ地部分は宅地としての利用効率が著しく損なわれているため、総地積に占めるがけ地の地積割合に応じて定められたがけ地補正率を用いて次のように評価します。

計算方法

評価額 = 路線価×奥行価格補正率×がけ地補正率×地積

【参考】財産評価基本通達・付表8 がけ地補正率表

特殊な宅地の評価方法

路線価方式・倍率方式を問わず、宅地にはその利用状況や法的制約等から特殊なケースがあり、その事情を評価にも適切に反映するよう個別に評価方法が定められているものが幾つかあります。

私道の用に供されている宅地

自己が所有している宅地の一部を近隣住民の通路(私道)として使っている場合があります。この場合、特定の者の通行の用に供されている通り抜けできない私道と、不特定多数の者の通行の用に供されている私道では制約の程度が異なるため、評価方法も次のように異なります。

①特定の者の通行の用に供されている私道評価額 = 自用地としての評価額×30%
②不特定多数の者の通行の用に供されている私道評価額 = 0

セットバックを必要とする宅地

宅地が建築基準法第42条第2項に規定する道路(いわゆる2項道路)に面している場合、道路の中心線から2mずつ後退した線が道路の境界とみなされ、将来、建物の建替え等を行う場合にはその境界線までの部分(セットバック)は道路敷きとして提供しなければなりません。

そこで、制約を受けるその部分については次のような方法で70%減額することができます。

計算方法

評価額 = 自用地としての評価額×(1-(セットバック部分の地積/宅地の総地積)×0.7)

地積規模の大きな宅地

マンション敷地のように周辺地域の標準的な宅地に比べて著しく地積が大きい宅地は、利用効率が良い反面、ある程度用途が限られたり、建設・開発行為にも様々な制約が生じることがあるため、一般に誰でも取得して利用できるというものではありません。

そこで、一定の要件を満たす地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上、それ以外の地域においては1,000㎡以上)は、地区区分や地積規模に応じて定められた”規模格差補正率”を用いて次のように評価します。

計算方法

評価額 = 自用地としての評価額×規模格差補正率

【参考】財産評価基本通達20-2 規模格差補正率

宅地の上に存する権利と評価方法

ここまではすべて宅地を自己の用に供している”自用地”として評価する場合の方法を解説してきましたが、実際には宅地を他人に貸したり、宅地の上に貸家を建て他人に貸しているようなケースもあり、宅地の上に他人の権利が存在することになるため、その分評価方法も異なります。

貸宅地

「貸宅地」とは、文字通り他人に貸し付けられている宅地で、借地借家法に定める借地権の目的となっている宅地のことをいいます。

そこで貸宅地は、その宅地の自用地としての評価額から借地権の価額を控除して評価します。尚、借地権割合は地域毎に異なり、路線価図(又は倍率表)に記載されています。

計算方法

評価額 = 自用地としての評価額×(1-借地権割合)

貸家建付地

「貸家建付地」とは、貸家の目的となっている宅地で、貸家の敷地になっている宅地のことをいいます。貸家建付地は貸宅地のように土地そのものに他人の権利(借地権)が存在しているわけではありませんが、貸家には借家権が存在するため所有者が宅地を使用・処分するにもある程度の制限が生じます。

そこで貸家建付地は、その地域の借地権割合と借家権割合等を用いて次のように評価します。尚、”借家権割合全国一律30%で、”賃貸割合”は貸家が複数の独立した部分がある場合に貸家の総床面積に占める賃貸されている各独立部分の床面積合計の割合をいいます。

計算方法

評価額 = 自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

使用貸借

親子間や親族間では宅地を無償(もしくは、固定資産税相当額程度の地代)で貸し借りしているケースもよくあります。

これを「使用貸借」といいますが、使用貸借では借り手に宅地に関する権利は何ら生じませんので、貸し手(所有者)の宅地の評価は自用地としての評価額がそのまま適用されます。

申告に際して提出する書式の記載方法

以上のような方法で概ね土地が評価できたら、目的に応じて申告書等に纏める必要があります。

相続財産の一つとして土地を取得した場合は、相続税の申告書と合わせて『土地及び土地の上に存する権利の評価明細書』に必要事項を記載して提出します。

法令で提出が義務付けられているわけではありませんが、申告書に記載されている土地等の価額がどのように算出されたのかを説明する上で不可欠な書式になりますので、税務署からも出来る限り提出することが求められています。

明細書の第一表(表面)は、対象となる土地の形状や状況等に応じて前編から解説してきた各評価項目に該当する欄で自用地1㎡当たりの価額を算出した後、最下段で地積を乗じて価額を計算するようになっています。
また第二表(裏面)は、セットバックを必要とする宅地の評価や貸宅地・貸家建付地といった土地の上に存する権利に関連する評価項目を記載するようになっています。

尚、具体的な記載方法については、国税庁から事例を交えた解説資料も公表されていますので参考にして下さい。

【参考】土地及び土地の上に存する権利の評価明細書の記載のしかた

まとめ

2回にわたって土地評価を自分で行う場合の方法について解説してきましたが、前編冒頭にも述べた通り、相続財産の中で土地の評価は一般の方にとって決して簡単なものではありません。一般的に高額な土地等に関する評価や計算の間違い、あるいは特例の適用誤りは税額への影響も大きくなります。

エピログ相続では一部行政機関でも利用されている「直感的な操作」での計測ができる機能に、相続専門の税理士のノウハウを加え、土地評価がはじめての方でもわかりやすい評価機能を実現しました。土地相続を行う可能性がある方は、一度会員登録してみることをお勧めします。

また相続税の申告では宅地の評価と合わせて『小規模宅地等の特例』の適用を申請するケースも多いと思います。こちらは別記事で解説していますのでそちらの記事もご覧ください。

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