相続税申告書の書き方と提出方法

相続は一生のうちに一度ないし二度経験するかどうかというものですから、相続に関する手続き、中でも相続税の申告のしかたをよく知っているという方はほとんどいないでしょう。最近は国税庁のe-Tax(国税電子申告・納税システム)の使い勝手が良くなり、相続税の申告も専用ソフトを使えば電子的に行えるようになりました。

しかし、所得税や贈与税などのように確定申告書等作成コーナーでパソコンやスマートフォンから簡単に申告が行えるまでには至っておらず、未だに相続税は紙の申告書に記入して申告する方が多いと思います。

そこで今回は、相続税申告書の書き方や添付書類、提出方法等について解説します。

目次

相続税申告書の書き方

相続税の申告書は、記載方法等を詳しく解説している『相続税の申告のしかた』と一緒に最寄りの税務署窓口で入手できますし、最近は国税庁のホームページからもダウンロードできるようになっています。

尚、これらは毎年最新のものに更新されますので申告する年分を間違えないよう注意して下さい。

【参考】相続税の申告書等の様式一覧(令和5年分用)

申告書の構成と記載順序

相続税の申告書は第1表から第15表までの複数の書式で構成されており、これらをすべて記載しなければならないというものではなく、該当する書式を自ら取捨選択して記載することになります。

中でも通常よく使われるのは次の15種類の書式で、◎印を付けた書式は必ず記載します。

◎第1表        相続税の申告書

◎第2表        相続税の総額の計算書

○第4表        相続税額の加算金額の計算書

○第4表の2  暦年課税分の贈与税額控除額の計算書

○第5表        配偶者の税額軽減額の計算書

○第6表        未成年者控除額・障害者控除額の計算書

○第7表        相次相続控除額の計算書

○第8表        外国税額控除額等の計算書

○第9表        生命保険金などの明細書

○第10表       退職手当金などの明細書

◎第11表      相続税がかかる財産の明細書

○第11・11の2表の付表1 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書

○第13表       債務及び葬式費用の明細書

○第14表       純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額等の明細書

◎第15表      相続財産の種類別価額表

申告書の中核を構成するのは◎を付けた書式ですが、概ね次のような順序で記載すると漏れなく効率的に作成することができます。

手順①第11表を除く第9表~第14表と次の(2)で示す評価明細書で該当するものを作成する。
手順②①で作成したものから第11表及び第15表に転記する。
手順③第11表と第15表から第1表及び第2表を作成する。
手順④第4表~第8表で該当する税額加算又は税額控除があれば作成し、第1表に転記する。
申告書の作成順序

各書式の記載のしかたについては、先に挙げた『相続税の申告のしかた』の中に申告書の記載例が掲載されていますので詳しくはそちらを参照して下さい。

【参考】相続税の申告書の記載例

財産に係る各評価明細書

提出が義務付けられているわけではありませんが、相続税の申告書と合わせて第11表や第15表に記載する財産の価額をどのように評価・算出したのかを所定の明細書に記載して出来る限り提出することが税務署から求められています。

所定の明細書とは次のようなもので、同様に国税庁のホームページからダウンロードできるようになっており、通常よく使われるのは◎印を付けた書式です。

明細書の種類

◎取引相場のない株式(出資)の評価明細書

上場株式の評価明細書

○登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書

土地及び土地の上に存する権利の評価明細書

配偶者居住権等の評価明細書

○一般動産及び船舶の評価明細書

○定期借地権等の評価明細書

○市街地農地等の評価明細書

○山林・森林の立木の評価明細書

○特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の評価明細書

○営業権等の評価明細書

定期金に関する権利の評価明細書

○信託受益権の評価明細書

【参考】申告手続・用紙/申告・申請・届出等、用紙/税務手続の案内/財産評価関係

必要となる添付書類

他にも相続税の申告書を税務署に提出する際に添付しなければならない書類があります。

通常必要となるもの

すべての申告に共通して必要な添付書類は以下の3つです。尚、③については提出が義務付けられているものではなく、税務署から提出が求められているものです。

①申告書に記載したマイナンバーの本人確認書類

次に掲げるいずれかの書類

☑ マイナンバーカード(裏面)の写し

☑ 通知カードの写し

☑ 住民票の写し(マイナンバーの記載があるものに限る)

次に掲げるいずれかの書類

☑ マイナンバーカード(表面)の写し

☑ 運転免許証やパスポートの写し

☑ 身体障害者手帳や公的医療保険の被保険者証の写し

②被相続人の全ての相続人を明らかにする次のいずれかの書類

次に掲げるいずれかの書類

☑ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

☑ 図形式の法定相続情報一覧図の写し

尚、戸籍謄本については相続開始日から10日を経過した日以後に作成されたものである必要があることに注意が必要です。

遺産分割に関する証明書類

次に掲げるいずれかの書類

☑ 遺言書の写し

☑ 遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明書

ケースに応じて必要となるもの

上記に加えて、申告者が以下のような特例の適用を受ける場合に添付が必要なものがあります。

①配偶者の税額軽減の適用を受ける場合

以下の資料を追加で添付する必要があります。

配偶者の税額軽減の適用を受ける場合に必要な書類

☑ 遺言書の写し、又は遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明書

☑ 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合)

②小規模宅地等の特例の適用を受ける場合

以下の資料を追加で添付する必要があります。

小規模宅地等の特例の適用を受ける場合に必要な書類

☑ 遺言書の写し、又は遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明書

☑ 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合)

この他、適用を受ける対象宅地等の種類に応じて必要になる書類がありますので、詳しくは以前の記事『小規模宅地等の特例~後編~』をご覧下さい。

③相続時精算課税適用者がいる場合

以下の資料を追加で添付する必要があります。

相続時精算課税適用者がいる場合に必要な書類

☑ 遺言書の写し、又は遺産分割協議書の写し及び相続人全員の印鑑証明書

☑ 被相続人及び相続時精算課税適用者の戸籍の附票の写し

尚、相続開始日以後に作成されたもある必要があることに注意が必要です。

その他、添付しておいた方が良いもの

更に、国税庁が公表している『相続税の申告のためのチェックシート』に必要事項を記載して添付しておくと申告が漏れなく適切に作成されていることを示す一つの材料になりますので、税務署からも提出することが推奨されています。

【参考】 相続税の申告のためのチェックシート(令和5年1月以降提出用)

申告書の提出方法と相続税の納付方法

相続税は相続又は遺贈により財産を取得した者(納税義務者)が申告・納付します。

申告書の提出期限

相続税の申告書は、納税義務者が被相続人の相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内被相続人の納税地(死亡時の住所地)を所轄する税務署に提出しなければなりません。

また、納めるべき相続税額がある場合には、原則、申告期限までに全額を金銭で一括納付しなければなりません。つまり、申告期限が納付期限でもあるということです。

申告書の提出方法

申告書は他の税目と同様、所轄税務署の窓口に提出するか、郵送によっても提出することができます。

尚、2019(令和元)年10月からe-Taxでも相続税の申告書が提出できるようになりましたが、冒頭にも述べた通り、現時点では専用のe-Taxソフトを国税庁のホームページからダウンロードして使用する必要があります。

相続税の納付方法

相続税は金銭による全額一括納付が原則ですが、その方法は幾つかあります。

最も一般的な方法は、金融機関や税務署の窓口に備え付けられた所定の納付書で納める方法です。窓口が開いている平日日中しか手続きができませんが、手数料がかからず比較的便利です。

また、最近ではクレジットカードやe-Taxの電子納税(ダイレクト納付/インターネットバンキング)を利用した納付も増えています。一度に納付できる金額の上限や決済手数料がかかるなどの注意点はありますが、夜間や休日でも手続きができるというメリットがあります。

まとめ

ここまで相続税申告書の書き方や提出方法等を解説しましたが、誤って記入してしまって後から修正する可能性があることなども考えると、やはり申告書はパソコン等で電子的に作成しておいた方が良いに越したことはありません。

相続税の申告を正確かつ効率的に行うために、エピログ相続を積極的に活用しましょう。

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